ばーか。〜あいつを振るなら、俺がその理由になってやるよ。〜



「ああそうだ、今って暇?」

膝上の痛みが引いたらしい小野寺くんに尋ねられ、わたしはみいの席を確認してから「暇だよ」と返した。

「ラッキー。ちょっと付き合ってくれねえ?」

「えっ、計算に?」

「そう。電卓は得意?」

「電卓……」


わたしの唯一の特技だった。

小学校時代、算数が大嫌いだったわたしは、宿題で算数のプリントなどが課せられるとすぐに電卓を使っていた。

もちろん親にバレるわけにはいかないから、電卓が卓上にある時間を極力短くした。

というのも、できる限り自力で解いて――といった真面目な方法でではなく、

できる限りその計算の答えを出す時間を短くする、という方法でだ。

そういった不正行為を繰り返すうち、わたしは電卓超得意系女子へと成長した。


「得意だよ」と答えると、「付き合ってくれる?」と遠慮がちに言われた。

なんだか告白されているようで調子に乗りそうだからやめてくれと心の中で言ってから、

「全力でお手伝い致します」と頷いた。