ばーか。〜あいつを振るなら、俺がその理由になってやるよ。〜



昼食を済ませ、先に弁当箱をロッカーに放ってから自分の位置に戻った。

もう一度みいのところへ行こうかと思ったが、小野寺くんの席と通路を越えた先の隣の席にみいの姿はなかった。

トイレにでも行っているのだろうと思い、自分の席に着いた。


隣の机に置いてあるノートに綺麗な字で大量に並べられている難しい数式に、

問題のレベルがアップしているような感覚を抱きながら、

1日中あんなものを眺めていて本当に楽しいのだろうかと考えた。

ノートに並べられた数式は、わたしには別世界の生き物が書いた文字のようにしか見えない。


しばらくの間、時々書き足される暗号と素早く電卓を叩く小野寺くんの白い手を眺めていた。

ふと、小野寺くんがゆっくりこちらを向いた。

わたしと目が合うと、彼は大きく体を震わせ、ガツッという音の直後、綺麗な顔をしかめて右の膝上を押さえた。

「いやっ……びっくりした」

結構痛い、と呟き、小野寺くんはくすりと小さく笑った。