ばーか。〜あいつを振るなら、俺がその理由になってやるよ。〜



みいは驚いたように、もともと大きな目をさらに大きくした。

「……なんでわかるの?」

「わたし。その、遠山 翔が中1の冬頃に付き合ったがすぐに飽きて中2の夏休み前に捨てたとか言ってやがる元カノが、わたし」

「嘘……」

みいは刑事ドラマで死体を見つけた女優のような顔で呟いた。

わたしは、カケルの今の彼女がみいだということにも多少は驚いたが、

それよりも、カケルがわたしに飽きた頃に好きになった人とはもう別れているということに呆れた。

カケルがそこまで飽きっぽい男だったならば、今のわたしとしてはこちらから願い下げだ。

あんな男よりもいい人を見つけてやろうと、改めて心に誓った。


遠山 翔の元カノがわたしだということに対するみいの言葉に、「本当さ」と返す。

「あっ。ただし、わたしのあと、みいの前――遠山 翔の2番目の彼女さんのことは聞かないでおくれよ?」

「なんで?」

聞くなと言われると聞きたくなっちゃうんだけど、と言うみいに、「その人のことはわしも知らんのじゃ、あしからず」と返す。

「そうなんだ……。でも、翔ちゃんの元カノの1人が里香だってわかって、1つだけ不安になったことがある」

「なに?」

「あたしたち、逢ってよかったのかな?」

みいのドラマのような言葉に、小さく噴き出す。

「そんなドラマの中の恋人みたいなこと言わないでよ。わたしたちは普通の友達。それ以上でも以下でもない。

わたしはカケルの今の彼女がみいだって知ったところで、みいの見方も変わらないし、存在も変わらない」

「里香……」

極稀にいいこと言うね、とみいはさりげなくわたしの心に傷を残した。

「……き、君……なんて失敬なっ」

ヘヘッ、と笑うみいに、「笑いごとじゃないっ」とうるさいおじさんのような声で返す。