普段あまり話さない女子生徒に、「ねえねえ」と声を掛けられたのは、その日の昼食中だった。
大好物の餃子むすびを頬張ろうとしたとき、左腕をつんつんとつつかれた。
左側を見てみると、4人で昼食を摂っている女子グループの1人が、わたしを不思議そうに見ていた。
「ん、なに?」
「いや、その……前々から不思議に思ってたんだけど、そのおにぎり、なに出てるの?」
「えっ?」
その手に持ってるやつ、と彼女が指さしたのは、わたしの大好物、餃子むすびだった。
「えっ、変?」
「ちょっとおかしいよね」
「そんなことないと思うけど……」
ふと前にいるみいに目をやると、彼女はにやにやと笑っていた。
「えっ、でそれ、なに出てるの?」
「ああ、餃子だよ。餃子の皮」
「餃子?」
訊いてきた女子生徒は、叫ぶように言った餃子に疑問符をつけた。
「えっ、おむすびの具が焼き餃子ってそんなに変?」
「変っていうか……」
そもそも美味しいのかと、少し前に聞いたばかりの言葉が続けられた。
ちらりと見たみいは、笑いをこらえるように斜め下辺りを見ていた。
「美味しいよ。えらい美味しいよ。いい? 餃子はね、季節も時間も温度も、関係なく美味しいんだよ?」
わたしが餃子の美味さを語ると、女子生徒は困ったように笑い、自分たちのグループの世界へ戻っていった。



