放課後、家に帰ると自分の部屋へ直行し、早速 上下で色の違う2本線のジャージに着替えた。
携帯電話という誘惑に負けながらもなんとか宿題を済ませると、
時計は普段観ているニュース番組で天気予報が始まる時間を少し過ぎた頃を示していた。
テレビをつけると、画面の向こうにはいつも天気を教えてくれる気象予報士がいた。
頭のよさそうな雰囲気が滲み出た、綺麗な若い女性だ。
彼女はちょうど、わたしの住んでいる辺りの天気を伝えていた。
「ここ数日暖かい日が続いているんですが、明日 明後日と、気温がぐっと下がるんですね」
「えっ、まじで?」
いつものように、画面の中の気象予報士に話し掛ける。
「――はい。なので、明日 明後日は厚手のパーカーなどを羽織ってお出掛け下さい。夜も冷え込むので――」
「まじかまじか」
立ち上がる際に明るい茶色のテーブルに強打した右膝をさすりつつ、
今日はとっくりだなと呟き、わたしはドレッサーを開けた。
中から1枚、ビビットなピンク色のとっくりのTシャツを引っ張り出す。
少々しわが目立つが、パジャマとして着るには全く問題ない。
少し前、従姉妹に最近はこれをタートルネックやハイネックと呼ぶのだと教えてもらったことを思い出し、「タートルネック、ハイネック……」と呟く。
しかし最近の横文字ではしっくりこず、
「とっくり」と言い直して派手な色のそれを簡単にたたみ、小さくまとまっている敷布団の上に放った。



