小野寺くんの隣という位置に指定された机に鞄を置き、昨日とは打って変わって見事なまでに晴れた空へ視線をやる。
そして、盛りに盛った泣きそうな顔を作る。
ああ神様、わたくしが先ほど、この学校の王子様と遭遇したことには、果たしていかなる意味があるのでしょうか――。
ああ、と息を吐くように言い、手の甲で口を押さえる。
そして盛りに盛った泣きそうな顔のまま空から顔を背ければ、せっせと小難しい計算を解いていく経理課の人がいた。
ノートに美しい字で暗号のような数式を並べ、綺麗な茶色っぽい目でそれを眺めている。
ノートに書かれた文字とそれを眺める小野寺くんを見ているうち、はっとした。
慌てて後ろを向く。
椅子に腰をぶつけたが、さほど痛みは感じない。
見てはいけないものを見てしまった気がした。
知ってはいけないことを知ってしまった気がした。
小野寺くんは、わたしが思うに変態だ。
登校してきて間もなくノートを開き、わけのわからない数式を並べ、それを眺める。
彼はそれを昼休みにもやっていた。
1日中数式を眺めているのだ。
これを知っているのはわたし以外にどれだけいるだろうと考えた。



