ばーか。〜あいつを振るなら、俺がその理由になってやるよ。〜



教室へ向かう間、みいが話を聞いてあげると言ってくれるものだから、先ほどの小野寺くんとのことをすべて話した。

わたしが話し終えた直後、みいは楽しそうに笑った。

微かに感じる馬鹿にした雰囲気がどことなく弟に似ていてなんとも言えない気持ちになる。


「大丈夫だって、ちょっと見つめ合ったくらい」

「見つめ合ったとか、言い方を考えておくれよ」

「でも本当。そんなに気にすることないよ。小野寺くんのほうは気にしてないと思うよ、全く」

「でも、今後またこういうことがあるとまずいよね?」

「平気じゃない? 里香、気にしすぎだよ。小野寺くんは里香のこと全く見てないから大丈夫だって。

……まあどうやら、里香は小野寺くんのことしか見ていないようだけどね」

「わたしだって小野寺くんのことなんて全く見てないから」

そういうのほんと禁止、と付け加えると、ムキになったのがいけなかったのか、みいはふふふと楽しそうに笑った。


ため息とともに教室に入ると、わたしはすぐに自分の隣の席を確認した。

そこに彼がいれば、どんなテンションで席に着けばいいかわからないからだ。

どうかいないでおくれと願ったが、視線の先に現れた席にはどう見ても小野寺くんでしかない男子が座っており、わたしは再びため息をついた。