通学路を半分ほど歩いた頃に再び雨が降ってきた。
傘をさすほどの勢いではなかったから、わたしは走って家へ向かった。
キャラメル色のベストと半袖のワイシャツを湿らせ、髪の毛を濡れた蜘蛛の巣のようにして家に着いた。
雑に鍵穴へ鍵をさし、勢いよく反時計回りに回す。
玄関前に屋根がないから、ここまできても濡れるのだ。
壊す勢いで玄関の扉を右に引き、玄関の中へ逃げ込む。
入った直後に足を滑らせて転びかけたせいで、ちようどリビングから出てきた弟に嘲笑された。
「かっこ悪」
ばっかじゃねえのという弟の言葉の直後、馬鹿じゃないよと『ば』を強調して返す。
「その返しが馬鹿なんだよな」
「だから馬鹿じゃないよっ。てかあんた、なんでいるんでえ?」
「今日一斉下校だし」
「ああそう」
弟の小学校が一斉下校だったと知り、今日金曜日だったんだと考えていると、弟は「明日って晴れんの?」と訊いてきた。
「晴れるけど気温はそんな高くないらしいよ」
なんでと訊き返すと、弟は「明日友達ん家行くから」と返し、トイレのほうへ歩いていった。
「その友達によーくお勉強を教えてもらいなさい?」と言ったわたしの声が届いたかはわからない。
わかったかと続けるか迷ったが、わたしは玄関の鍵を閉め、2階の自分の部屋へ向かった。



