ゆうと話すこと以外に楽しいことなど見つけられないわたしの中学校生活に刺激が与えられたのは、

数学後の休み時間を奪われてからおよそ4か月半後のことだった。


襟巻きと手袋が登下校時の強い味方となる1月末の昼休み、

右斜め後ろの席の男子――遠山 翔(とおやま しょう)くんに背中をつつかれた。

彼は、クラスの上位に居座る頭脳と、175センチの長身、さらにはクールな美貌をも持ち合わせている最強の男子だ。


背中を猛烈なくすぐったさが襲い、大きく体を捻りながら振り返った。

スーッと音を出しながら息を吐く。

「びっくりした、どうした?」

「お前、好きなやついんの?」

「えっ、なんで?」

「俺、お前のこと好きだから」

さらりと放たれた言葉に、わたしはなにも返せないまま固まった。

恐らく、相当間抜けな顔をしているだろう。


「俺と付き合え」

「……はい?」


遠山くん。

女の子ならたくさんいるのに、

なんでわたしなんかがいいんですか――?