ばーか。〜あいつを振るなら、俺がその理由になってやるよ。〜



わたしの声と、脚を強打した音に反応したカケルが振り返る。

「なに?」と発音した彼の声は、なぜかとても優しいものに聞こえた。

わたしは学級日誌のページの真ん中に握っていたシャーペンを放り、カケルのもとへ小走りで寄った。

わたしはカケルを見上げ、彼はわたしを見下ろす。

数秒間見つめ合ってから、カケルにそっと抱きついた。

「一緒にいてくれてありがとう。今日まで……チャンスをくれてありがとう」

大好きだよ、と言ってカケルの華奢な体にまわす腕に力を込める。

カケルの腕がわたしの体にまわることはないが、カケルに触れているだけで十分だった。


「……よしっ」

10秒ほどカケルに抱きついたあと、少しずつ腕の力を抜いた。

「もう、大丈夫」

笑っているはずなのに頬が濡れていることを不思議に思っていると、カケルは「ぶっさいくだな」と笑った。

「ちびでぶっさいくともなると、これから大変だぞ。笑ってたほうがマシだ、そうしてろ」

「馬鹿じゃないの? 誰がこのぶっさいくな顔にしてるのよ」

わたしが言い返すと、カケルはふっと笑った。