帰りの会を済ませ、生徒が皆帰ったあとの教室。
わたしは電気を点けたままオレンジ色に照らされる教室で、少し乱暴にペンケースを開けた。
「どうした?」とカケルの声がする。
「日誌……書くの忘れてて。ていうか、書くのを忘れてたことを忘れてて」
わたしが苦笑すると、カケルは「ああ」と口元に下手くそな笑みを浮かべた。
「大丈夫だよ、わたし書いておくから」
「まじか」
じゃあお言葉に甘えて、と続け、カケルは鞄を肩にかけた。
それから無言で教室を出ていこうとする彼の後ろ姿が切なくて、「待って」と呼び止めた。
カケルを失う寂しさは大きなもので、呼び止めるときに机に強打した左脚の痛みはほとんどない。



