「でまあ、彼氏っているのって訊かれて、いないですよって言ったら……」

「僕が、君の彼氏という幸福を手にしていいかい?」

わたしが言うと、みいは「先輩はそんな気持ち悪いこと言わない」と言い、

「もしよかったら俺と付き合ってくれないかって」と実際に受け取った告白の言葉を続けた。

「へええ……。いいね、楽しそうで」

「じゃあさあ、里香も告白すればいいじゃん」

「……だ、誰によ」

口に含んでいた水筒の中身を噴き出しそうになったのをこらえ、飲み込んでから返すと、

「大好きな小野寺くん――いや、薫くんに」と嫌な笑みを浮かべたみいは言った。

さすがに小声だった。

「ええ……絶対振られるに決まってるじゃん」

「いいじゃん、振られたら振られたで。いいの? 想いを告げられないまま卒業――それならまだいい。

想いを告げられないまま、同級生の彼の卒業を高校2年として見送るなんてことになっても」

「ちょっ、なんでわたしが留年する設定で話が進んでるのよ」

「だって、本当に進級がぎりぎりだったって言ったのは誰よ」

まあそうだけどさあ、と呟き、餃子むすびを小さくかじる。