ばーか。〜あいつを振るなら、俺がその理由になってやるよ。〜



すでに登校してきていた薫くんは、今日も経理課の人間になっていた。

相も変わらずノートにはわけのわからない文字が彼の綺麗な字で並べられており、

それを眺める薫くんは、時々素早く電卓を叩いている。


少し前までは変態としか捉えられなかったその姿が、今のわたしにはこの上ないほど美しく見える。


恋とは不思議なものだなと考えていると、わたしの存在に気づいた薫くんが「びっくりしたあ……」と呟いた。

彼への恋心に気づいてから、見慣れたはずの薫くんの驚いた表情がすごくかわいらしく思えるようになった。

自然と浮かんだ笑顔で「おはよう」と返す。

薫くんからは、なにかを落ち着けるような声で「おう……」と返ってくる。


今まで何度もしてきたこのやりとりがこんなにも新鮮に思えるなんて、やはり恋とは不思議なものだ。