ばーか。〜あいつを振るなら、俺がその理由になってやるよ。〜



数学を担当する鬼の黒眼鏡男性教師からの新手のいじめは絶えないまま、

中学生になってから2度目の夏休みが訪れようとしていた。


カケルとは今年も同じクラスだった。


蝉の声が響く夏空の下、わたしはカケルの部屋にいた。


「もう夏休みだね。お祭りとか行きたいなあ。2人で浴衣なんか着ちゃったりなんかしちゃって?」


携帯の画面に浮かぶ浴衣の画像を眺めながら語ると、「あのさ」と感情のないカケルの声がした。


彼の声にわかりやすい感情がないのはいつものことで、

特に気にすることなく携帯の画面を眺めたまま「ん?」と返す。


「別れてくんね?」

理解に要した数秒の沈黙のあと、「えっ?」と言いながら顔を上げた。

カケルも、先ほどまでのわたしと同じように携帯を見ている。


「なんで……?」

恐る恐る尋ねると、「新鮮味がなくなった。他に好きなやつもできたし」と返ってきた。

悲しい言葉を並べるカケルの声に、やはりわかりやすい感情はない。