中学校の入学式は昼からだった。みんな、校内に入っていく。
(うわぁ)
すごく身長の高い人が、私の前を通った。私よりも、2・30センチは高いだろう。かなり大きくて、ビックリしてしてしまう。
(だめだ!)
こんなんじゃ。
私は、大丈夫、大丈夫。と唱えながら、教室、1年4組にむかう。そして、大丈夫、大丈夫。と唱えながら黒板に書いてあった席について、下をむく。
(近くにいる人が、同い年に見えない…!)
特に、人見知りってこともないけれど、なんか怖い。やっぱ、早く友達作らなきゃなぁ、と思う。
しばらくすると、がらっとドアが開いて、小柄な女性が入ってきた。ドアをすっと閉めて、教壇の前に立つ。そして、言った。
「はい、こんにちは。1年4組担任の東出です。1年間よろしくお願いします。担当教科は、英語です」
女性は、東出先生という、英語の先生らしかった。
(え、英語?)
この先生が英語を話すところを想像出来ない。髪は茶色の様な色だけど、染めた色に見えた。
(でも、いい人そうな感じ…)
少なくとも、悪い人には見えない。ちゃんとした関係を築いていきたい、と思う。
ふと、右隣から視線を感じる。私は、右隣を見る。長い黒髪の女の子が座っていた。日本人形みたい、という例えをしたくなるような子。それがその子の第1印象だった。
(あ…)
その子がこっちを見て、目が合う。思わず、軽く会釈する。そして、左胸についている、名札を確認する。
(森井京奈ちゃん?よし、京ちゃんだ)
その子は、もう前をむいていた。東出先生が話している入学式の話を聞いていた。
(真面目だなぁー)
私に比べて。私も、前にむき直す。先生がまだ喋っていた。
(入学式って、初めて先輩と会う時って言うじゃん?もうちょっと、心の準備っていると思うんだよね)
そんなことを考えながら、頬付をつく。小学校の体育館は寒かったから、寒がりの私は中学校の体育館もつらいんだろうな。ひざ掛けを持ってこれば良かったかもしれない、と思っていた。