由夏も心配だけど、実は隣の先輩も、このところちょっと沈みがちに見える。そして今日もなにやら、物思いにふけっている時間が多いように見受けられる。


松本先輩が来ることに、いろいろ思うところがあるのかもしれないな。なんて思いながら、見てないふりをして、先輩を見ている私。なにか言ってあげたいけど、今の私達の関係じゃ、何も言えない。


そう言えば、今日って・・・なんて、私が複雑な思いでいると、先輩に近づく人影が。


「元気ないね。」


(加奈ちゃん。)


加奈ちゃんが先輩に声を掛ける。


「そんなことないよ。」


加奈ちゃんの顔を見ずに答える先輩。


「あなたが元気ないと心配になる。」


「大丈夫だよ。」


「ならいいけど。」


たぶん私に聞かせるつもりなんだろう、加奈ちゃんは先輩を「あなた」と呼び、タメ口で話してる。


先輩を渡したくない、私にそう言い残して、屋上から去った次の日、加奈ちゃんは私に先輩に告白したことを告げた。


「まだ返事はもらってないけど、私絶対に先輩を落として見せるから。」


それが私達が言葉を交わした、今のところ最後。加奈ちゃんは本気なんだ。


でも加奈ちゃん、戦う相手が違ってるよ。先輩の心の中にいる人は前にも話したけど、私じゃないんだから。


なんでこんなになっちゃったんだろう。先輩とも加奈ちゃんとも話せなくなって、私に想いを伝えてくれた加瀬くんにも、私はノ-を言った。


「わかってたんだ、でも後悔はしてない。俺の勝手な思いに向き合ってくれて、本当にありがとう。」


笑顔でそう言ってくれた加瀬くん。だけど、それから私達の間に会話はない。


もうすぐ12月、もうすぐ受験、もうすぐ卒業・・・なのにこんなに揺れ動いてる私達・・・。


そして、そんな中、松本先輩は、帰って来た。