いつか淡い恋の先をキミと

私の目を見ながら、本当に後悔していると言った榛名くんは物凄く哀しげな目をしていた。


後悔していることが本当に伝わってきた。


それにさっき私が言おうとしていたことを分かってくれたことに驚いた。


驚いたけど、嬉しかった。


この人は人の心の痛みが分かる人なんだろうな、漠然とそう思った。


だから、


「分からないけど…相手の子は怒ってないと思うよ。そりゃあ傷付いたかもしれないけど、少しでも榛名くんと喋ったことがあるなら、その子は榛名くんが傷付けるつもりでそんなことを言ったんじゃないってことくらい分かって、さっきの私と同じことを直接榛名くんに言えなくても、心の中では思ってるよ」


私も思ったことを君に伝えるよ。


「……そうだといいな」


「きっとそうだよ!」


「ありがとう、一ノ瀬さん」


「こちらこそありがとう、榛名くん」


なんだろう、この温かい気持ちは。


ほっこりするような大事にしたくなる気持ち。


分からないけど、分からないままでもいいかなと思ってしまう不思議な気持ち。


心なしか家までの道のりがいつもより軽い気がした。


「榛名くん、ありがとう。家まで送ってくれて」


「どういたしまして」


「気を付けて帰ってね」


「うん。じゃあね、一ノ瀬さん」


「……バイバイ」


あぁ、なんだか物凄く名残惜しい。


もうちょっとだけ喋っていたい。


そんなことが出来ないのは分かってるけど…。


榛名くんの後ろ姿が見えなくなるまでずっと眺めながら、必死に名残惜しい気持ちを抑えていた。