いつか淡い恋の先をキミと

自分でも何が言いたいのか全然分からないし、どうして呼び止めたのかも理解できない。


矛盾、そんな言葉がぴったりなように思う。


榛名くんが私のこと嫌いなの分かってるのに、私は何がしたいんだろう。


嫌わないで、とでも言いたいのだろうか。


「君はあの日と同じことを言うんだね」


「……あの日?」


榛名くんの言うあの日が何の日なのか見当も付かない。


だから多分それは私が記憶を失う前のことだろうと推測出来る。


「俺が一ノ瀬さんを嫌いになる理由なんてないんだよ。だってあんな酷いことを言ったのは俺なんだから、嫌われて当然なのはこっちなんだよ」


私が何を言われたのか全く思い出せない。


だけど一つだけ分かることがある。


この人が私に酷いことを言ったのだとすれば、


「それは私も榛名くんに何か酷いことをしたからだよね」


こっちも同じことをしてるからだと思う。


「だって、榛名くんが私に一方的に酷いことをするようには見えないよ」


見えない、本当に見えない。


「もしそれで、前の私がもしそれで榛名くんに物凄く怒ってたんだとしたら…それは違うと思うの。私も謝りたかったんだと思うの」


きっとそう。


「だから…今、謝ったんじゃ遅いかな…?もう許してくれない?」


今でも間に合うなら私は君に謝りたい。


「ごめんね…ごめんなさ――」


「お願いだから謝らないでよ……なんでそんなに優しいの。なんでそんなに……」