いつか淡い恋の先をキミと

そして迎えた放課後、教えてもらった生徒指導室へ行くと先生は私に優しく微笑みかけた。


「さぁ、座って」


「……はい」


「そろそろ学校には慣れたか?」


「…はい」


「そうか、それは良かった。関口や藤堂がいるから心配はしていなかったんだけどな」


「……」


「見舞いに行ったきり会ってなかったが、その間に何か変わったことはあったか」


「……いえ、特には」


「すまんな、一ノ瀬。気の利いたことも言ってやれんくて」


「そんな…気持ちだけで充分です。あの、先生…私からも一つ聞いてもいいですか?」


「なんだい」


「前の私は、先生から見てどんな生徒でしたか?」


私の思い切った質問に、先生は「そうだなぁ」と言いながら答えてくれた。


「一言で言うと、素直な生徒だな」


「……素直、ですか?」


「純粋な心を持ってるとでも言うのかな。人が言ってることはなんでも疑わずに信じてた気がするよ」


今の私とは大違いだ。


聞いた瞬間、そんなことを思った。


信じたいことだけを信じようとする私じゃない。


第一今の私は素直じゃないし、なんでも疑ってる気がする。


だから陽平くんや響子ちゃんの言葉だって…そういう風に捉えてしまう。


「あのな、一ノ瀬。もうみんなからは言われてるとは思うが無理に思い出そうとする必要はないんだぞ」


「……それは分かってます」


「ならいいが」


「それと先生、私は本をよく読んでいましたか?」