「……うるせぇんだ――」


陽平くんの言葉が途中でくぐもって聞こえてきて、俯いてた顔をあげれば、そこには響子ちゃんがいて。


私の両耳を両手で塞いでいた。


何かを堪えるように、そして何かを押し殺すかのようなそんな表情。


哀しげに微笑むその顔はとても綺麗だった。


「くるみは何も聞かなくていい」


目の前でそう言った響子ちゃんの口をずっと眺めてた。


「あたしたちのそばにいればいい」


ずっと。


「上辺だけの心配してる奴なんかにくるみのこと分かられたくなんかないの」


ずっと。


「くるみが信じたいことだけを信じればいい」


ずっと。


「あたしね、多分くるみのこと誰よりも好きなのよ」


とうとう見れなくなったのは涙のせい。


みんな、私のことを好きだと言って何かを隠そうとすることに気付いてしまったから。


一体何を隠そうとしているのか私には全く分からない。


だけど分からないだけに、何か得体のしれない大きなことが隠されてそうで怖い。


自分じゃどうにも出来ない。


だから私はそれにもまた、気付かない振りをする。


「ありがとう、響子ちゃん」


「うん」


「私も響子ちゃんが大好きだよ」


「うん」


「……あとね私、陽平くんのことも好き」


「え?」


「絶対好きになりたいの。だから好き」


「……くるみ、」


「陽平くんは私のこと好きだって言ってくれた。それが私の信じたいことだから」


「……」