夏休みがあともう少しで終わろうとしていたその頃。
蝉の声で目を覚ました私は部屋の中を何気なく見渡していた。
あれから、あの日から私は過去の事を考えるのをやめた。
と言っても無意識に考えてしまっているのは仕方がないから、意識的に考えるのをやめたというだけだけれど。
陽平くんが私と作る未来にしか興味がないと言ってくれたのが思いの外、心に響いたのかもしれない。
あれからも何度か陽平くんや他の子達とも遊んでたくさんお喋りをした。
それにお母さんやお父さんとも一泊二日の温泉旅行に出かけた。
みんな私の思い出をたくさん作ってくれた。
空っぽな私の中身を埋めるように、優しさで満たされるように、たくさんの愛をくれた。
カタチは様々だけど、それが愛だということは分かった。
昔の私は――…ダメだ。
何もしていないと頭が勝手に考えることを始めてしまう。
何か違うことに考えをシフトしようとして目に留まったのはたくさんの文庫本や単行本でいっぱいになっている本棚。
これは全部前の私が集めたのだろうかと不思議に思い、ベットから出てその本棚を見つめた。
『キミのそばで僕は何を考える』
『嘘つきは恋の始まり』
『傷を負った十字架』
『クローバーの絆』
『秘密のチェリー』
『優しい悪魔』
『放課後ティータイム』
『青春時代』
『向日葵の太陽』
『もう守れない約束』
並んでいる本のタイトルは見ただけで内容が察知出来るモノもあればそうでないのもある。
特に『向日葵の太陽』という本が私には凄く気になる。
どんなお話なのだろう、そう考えるだけでもわくわくするタイトルの本を私は読んだことがあるのだろうか。
ここに並んでいる本を私は全部読んだのだろうか。
