いつか淡い恋の先をキミと

だけどそんな疑問に返事はない。


「陽平く――」


「お前がそんなこと気にする必要はねぇんだよ」


そして私の言葉を遮ってようやく返ってきた言葉には棘が含まれていた。


「でも……」


「過去なんかいらねぇ。俺はお前と作る未来にしか興味がない」


有無を言わさぬその口調に否が応でも「うん」と言うしかなかった。


ここで私が踏み込むのは得策じゃない。


なんでかわからないけど何故かそう思った。


そして多分この勘たるものは外れない。


碌に記憶も持ってないのに余計な事は言わない方がいい。


陽平くんが言うように今の私には未来しか作れない。


振り返る過去なんかひとつもなくて、誰かと作る未来しかない。


そしてそれを陽平くんは一緒に作ろうと言ってくれてる。


だから私はそれに従う。


「くるみは何も考えなくていい。でも俺の事だけ考えてて」


「……」


「そしたら俺はお前を傷付ける全部から守ってやる」


何も考えなくていい。でも俺の事だけ考えてて。そしたら俺はお前を傷付ける全部から守ってやる。


一体どれだけの思いの丈なんだろう。


今の私には想像できないけれど、前の私には容易に想像出来たのかもしれないけど、そんなのどうだっていい。


陽平くんがそう言ってくれるなら。


陽平くんが私との過去をいらないと言うのなら。


陽平くんが記憶のない私の全てを受け入れてくれると言うのなら。


「……陽平くん」


あなたにずっとそばにいてほしい。


不安で寂しくて堪らないこの心の穴を埋めてほしい。


「くるみ、好きだ」


そして名前を呼ばれ抱きしめられたとき、少しその穴が埋められた気がした。