いつか淡い恋の先をキミと

そしてみんなのところには戻らず、海の家から少し離れたあまり人がいない周りが静かな所までやって来た。


ここにくるまでお互いに一言も喋らなかった。


陽平くんが何を考えてるのかも分からなかったし、自分が何を言ってもいいのかも分からなかった。


「似合ってるから」


「え?」


唐突に振り返られて言われた言葉をすぐに飲み込むことは出来なかった。


「本当は俺が一番最初に言いたかったんだ。その水着が似合ってるって」


「……陽平くん、」


「拓哉に先越されたのにも腹立つし、そんな露出が多いの選んだ響子にも腹が立つ」


「……」


「お前のそんな姿、誰にも見せたくなんかねぇんだよ。たとえそれが女であっても――あんなクソみたいな奴らにお前のこと悪く言われるのがマジでムカつく」


「私、気にしてないよ…?」


「気にしてなくてもお前は優しいから傷付くんだよ」


当たってる。


陽平くんの言うことは当たってる。


私が優しいのかはさておき、傷付いたのは確か。


前の私は誰から見ても陽平くんと釣り合ってなんかなかったんだと想像するだけで苦しくなる。


「くるみのこと傷付ける奴は許さない」


だけどそんなことに気付いて言葉にしてくれる陽平くんは多分翼くんと同じくらい優しい強さを持っているんだと思う。


口は悪いけど、それは人を傷付ける為のモノじゃない。


それが分かるのに2週間はかからなかった。


「ねぇ、陽平くん」


「なんだ?」


「きっと記憶を失う前の私は幸せだったんだろうね」


「……」


「陽平くんに愛されて幸せだったんだろうね。私は同じくらいの愛を返せてた…?」


想いを口にしてみれば、疑問が生まれた。


私はちゃんと陽平くんと同じ量の愛を返せてたのだろうかと。