いつか淡い恋の先をキミと

「え、なんでぇ? 別にいーじゃん!」


「ていうかこの子よくそんなBくらいしかない胸出せるよねぇ」


「あ、それあたしも思ったー! ねー、あたしらと遊んだ方が絶対楽しいって!!」


「ほんとほんと。この子にあなたは勿体無いよ!」


……やっぱり端から見たら陽平くんには勿体無いんだ、私。


そりゃそうだよね、陽平くんって物凄く整った顔してるもんね。


記憶を失う前の私は、どうやって陽平くんと付き合っていたのかな。


こうやって周りから色々言われてたのかな。


無防備で何の武器も持ってない今だから傷付いてるだけで、過去には何か対策出来ていたのかな。


悪口を言われても傷付かないで陽平くんの側にいられるような何かがあったのかな。


そもそも陽平くんは私と付き合うことに関してどう思っていたんだろう。


無理矢理付き合ってもらったのかな。


だから水着を着ても翼くんが悠美ちゃんに言うように似合ってるとは言ってくれないのかな。


ただ私が水着を着ているのが似合ってないというだけなら――それはそれで辛かったりもするけれど。


「あんまり調子乗ったこと言ってると、痛い目みるぞ。お前らみたいなただのビッチを俺が相手にするわけねぇだろ。胸がデカイだけの可愛い奴なら他にもいくらでいるっつーの。勘違いしてんじゃねぇぞ。っつーわけだからもう喋りかけてくんな」


口が悪いこと極まりないような暴言が聞こえてきたあと、


「行くぞ、くるみ」


さっきとは打って変わって優しい声色で陽平くんは私の耳元でそう言った。


怒ると怖い陽平くん。


だけどさっきのは多分、私のことで怒ってくれたんだということだけはしっかりと理解出来た。