だけどもうそこに君の姿はなくて…追いかけよう、そう思い駅の方向に走り出してすぐ。


さっきの男の子の後ろ姿が視界に入った。


「ちょっと待って…!」


「……っ!」


声を掛けるとあからさまにビクッとした肩を見て、ちょっと確信した。


「ねぇ、どうして来てくれないの?」


離れている距離を少しずつ詰めていき、そう尋ねる。


「え…?記憶…戻ったの?」


「……やっぱりあの時の人だ」


「え?」


「私が目を覚ました時…傍にいた人だよね?」


「やっぱり記憶は戻ってないんだね…」


「え?」


「ううん、なんでもないよ。よく覚えてたね、あの時の一回だけしか会ってないのに」


「…だって、物凄く安心したような悲しそうな顔してたから…それなのに、一度も会いに来てくれないから」


「……君がみんなに何て聞いてるかは知らないけど、君が怪我したの俺のせいだから」


「え?」


「みんな俺に気遣って黙ってくれてるんだと思うから、この話はしないでね。俺からのお願い。俺のことは忘れて」


「どうして…? どうしてそんなこと言うの?」


「どうしても。君とは同じクラスだったけど全然仲良くなかったし。人と関わるの苦手なんだよね」


「じゃあどうして家の前にいたの?」


「……それは、」


「関わりたくないんなら、黙っておけばいいじゃん」