途端、目から出てきだした異物には気付かないふり。


もう傷付くことすら許されない。


バカだな、あたし。


ちょっとは榛名くんもあたしと同じ気持ちになってくれてるのかもしれないなんて。


そんなことあるはずがなかったのに。


寧ろ迷惑だったなんて。


――バカみたいだ。


おまけに榛名くんの『大切』な本を汚してしまうだなんて。


傷付く資格すらあたしにはない。


あの時、声を掛けてはダメだった。


そして君との距離を詰めたいと思ってしまったのが間違いだった。


だってもう、詰めてしまったその距離に後悔しても遅いのだから。