そしてそれぞれの別れ道に差し掛かるまで誰一人として言葉を発しなかったが、


「…くるみは俺たち差し置いて男と喋ってんのかよ、」


投げ遣りにそう口火を切った陽平にみんな一斉に口を開いた。


「そういう言い方やめようよ」


「そうだよ、」


「お前らいいのかよ、くるみは俺たちよりあんな…つーか、あの男誰なんだよ」


「榛名 光流【ひかる】くんじゃないかな?」


「は?誰?」


「あの教室の端っこで本読んでる子」


「なんでそんな奴と絡んでんだよ!」


「あたしに八つ当たりしないでよ」


「してねぇよ」


「してるじゃない」


「うるせぇ。もういい、俺、帰るわ」


響子と喧嘩しかねない勢いに気が付いたのか陽平は帰ると言い出し、俺たちはその背中を黙って見送った。


「にしても、くるみのあんな幸せそうな顔は初めてだな」


「ほんと。陽ちゃんには悪いけど、あんなくるみの顔見たら応援したくなっちゃう」


響子と拓哉はそう言ったけど、陽平の傍に17年間いて、その想いを知ってる俺からすれば陽平を応援したい気持ちも捨てきれはしなかった。


そしてこのことを境に色々な事が変化していくことをこのときの俺たちは予想だにしていなかった。