「だって何かと便利だからね。それに俺は一人でいることに特に何の苦痛も感じないから」


「たまに寂しくなったりしない?」


「あんまりないね。一ノ瀬さんはやっぱり一人は嫌?」


「うん、たまにならいいけど、いつも一人は嫌っていうか無理かも。絶対寂しい。あたしね、拓哉と悠実と響子とは高校からの友達なんだけど、陽ちゃんと翼とは幼馴染なの」


「あ、そうだったんだ」


「だから赤ちゃんの頃からずっと一緒にいて、あんまり一人になったことがないの。だから突然一人にされたら結構寂しいかも…」


「それは寂しいね」


「榛名くんは幼馴染とかいないの?」


「いないことはなかったんだけど、やっぱり俺あんまり人と喋ったりしないから」


「あ、そっか」


それから榛名くんに「幼馴染ってどういうものなの?」って訊かれて、陽ちゃんと翼との間にあった色んなエピソードを話した。


こんな風に本のこと以外で話すのは初めてかもしれない、と妙にテンションがあがった。


一週間前まではこんな自分自身の事をまさか榛名くんに話すなんて。


――そしてこの日から週に一、二回はこうして榛名くんと放課後にお喋りするようになった。


本当は毎日でも話したいところだけど、そんな事は絶対に言えるわけがなかったし、理由を訊かれても困る。


まさか好きだからなんて口が裂けても言えない。


だから週に一、二回はこうやってあたしから誘うことで放課後の幸せタイムを作っていた。


たまには向こうから誘ってくれてもいいんだけどな、なんて贅沢なことを思いながらも毎回誘っていた。


迷惑だったら迷惑だと言ってくれるだろうと高を括って。