いつか淡い恋の先をキミと

教室を出てから誰もいない廊下に出て少し歩いたところで悠美を抱き締めたのは、そうしなきゃいけないと本能的に感じたから。


「あそこであぁいう風に言える悠美が俺は好きだよ」


「……わたしは、こういう時にこうやって抱き締めてくれる翼が好きだよ」


「ありがと」


「どういたしまして」


ここでようやくふふっと微笑む感じで少し笑ってくれた悠美に安心して、逆にこっちが癒された気がした。


いつでも誰にでも平等に優しい悠美だけど、その優しさの中に強さがあることを俺は知ってる。


その強さに惚れたんだということは恐らく悠美も知らないだろうけど、それは俺だけが分かっていればいい。


これからどうなるか分からない他のみんなの想いを俺たちだけは温かく見守ろう——そう心の中で誓った。


それから二人を見つけて、くるみを会議に行くように促した後。


不穏な空気を放ちまくっている陽平と悠美と三人になった俺たちはとりあえずその場に留まった。


こんな陽平を誰かと近付ける訳にもいかない。


「…なんなんだよっ!」


「陽平、」


「なんで記憶があってもなくてもくるみは同じこと言うんだよっ! なんでいつもあいつのこと庇うんだよ…っ」


「……くるみはくるみなりに俺たちにばっかり頼ってちゃダメだって思ったんだよ。榛名のことを庇うとかじゃなくてさ」


「じゃあなんでいきなりそんなこと思うんだよ、変だろ」


「それは…くるみにも色々あるんだよ」


「なんでお前がそんなくるみの色々を知ってる口調で話すんだよ」