いつか淡い恋の先をキミと

「どういうことだよ、拓哉」


話が全然見えない為、少なくとも拓哉の話を聞かなければと思った。


でもその場面に今まで何処かに行っていたはずの響子が飛び込んできた。


「あんたがくるみに何か言ったのね! 何て言ったのよ!」


「ちょっと、響子落ち着いて」


「落ち着いてなんかいられないわよ! だって、あたしはくるみと約束したんだもん! 一緒にクラスの出し物しようねって…っ」


「俺はそういうのが嫌なんだよ!」


響子が泣き出したことでクラスに残っている人たちがざわつき始めたのに、追い打ちをかけるように拓哉が声を荒げた為、一瞬静寂が訪れた。


「場所を変えよう——みんなごめん。でもなんでもないから」


そこからはとりあえず空き教室に四人で入り、響子が落ち着くのを待った。


嫌な沈黙が否応なく流れる。


でもこればかりは俺と悠美にはどうしようも出来ない。


「……そういうのが嫌って、どういうことよ」


そしてこの状況をどうにかしようと口火を切ったのは、この状況を作り出した張本人だった。


「もういいよ」


でも拓哉はそれに応えようとはしなかった。


「よくない…!」


「……」


「早く言いなさいよ、このバカ!」


「……響子はいつもくるみくるみって言うよな」


「それが何よ」


「さっきの実行委員だってそうだよ。くるみがやるって言い出して榛名を指名してから自分がやるだなんてさ。俺たちのことはどうでもいいのかよ」


「誰もそんなこと思ってない!」


「分かってる。頭では分かってるんだけど、心がついていかないんだよ。最近の響子はくるみだけがいればいいって感じがする」


「……」


「陽平の彼女になったくるみへの執着みたいなの…俺はすげぇ嫌だ」