いつか淡い恋の先をキミと

そして自分のクラスの前で一度息を整えてからそっと扉を開けた。


途端にクラスメイトのみんなの視線が一斉に私に集まる。


「遅れてすいません」


そう言いながら自分の席に急いだ。


「一ノ瀬、怪我は大丈夫なのか?」


「はい、大丈夫です。すいません」


「それなら良かった。今、文化祭の役割を決めているところなんだが黒板を見て分かるように実行委員になりたい奴が1人もいないんだ——ということで一ノ瀬がやってくれたりしないか?」


「……えっと、私は、」


そこで言葉が詰まったところで黒板に目を向けてみると、先生の言う通り確かに実行委員のところのカッコが2つとも埋まっていない。


忙しいらしい実行委員を誰もやりたがらないのは分かる。


でも私は朝にみんなと一緒にクラスの出し物をやると約束した。


だから私が実行委員をやると言ったら、せっかく一緒にやろうと言ってくれた響子ちゃんたちに悪い。


響子ちゃんたち……。


響子ちゃん。


『鈍くて素直で自分の気持ちに正直でまっすぐなくるみの裏で、実は傷付いてる奴がいるってこと、ちゃんとくるみには分かってて欲しいんだ』


さっきの拓哉くんの言葉がまた頭に浮かぶ。


まるでそれは呪文みたいに私の頭の中から離れない。


「先生、私やります」


気付いたらそう言ってた。


「おー、そうか! ありがとうな、一ノ瀬! 自主的に実行委員をやってくれるということでもう1人は一ノ瀬が選んでいいぞ」


先生の言葉に教室が騒つき、みんなが私に選ばれたくないんだろうなと想像がついた。