意味もなく泣きそうになるくらいなのだから、泣きそうになる意味もないんだと思う。


だって私は今泣く理由なんてみつけられない。


「……今はもう好きじゃないの?」


だからそんなことを聞いた理由にも意味なんてなかった。


ただ好きだったと言うくらいなのだから今は好きじゃないのかが気になっただけ、それくらいのこと。


どうせ今は好きじゃないよ、なんて答えが返ってくると信じて疑わなかったのに、


「俺にはもう好きなんて言う資格ないんだ」


返ってきた答えはそんなものじゃなかった。


言外に今も好きだ、そう言われた気がした。


好きだと言う資格がないだけで、資格さえあればいつでも好きだと伝えられる、そう言われたんだと分かった。


人に好きだと伝えるのに資格がいるのかどうか私には分からないけれど。


そんなことを言ってしまえば、私が陽平くんに好きだと伝えた時に資格なんてなかったように思う。


寂しいのが嫌で、一人になるのが嫌で、そんな色々が重なって、ただ陽平くんが私のことを好きだと言ってくれるからそれに応えたくて、自分も好きだと伝えた私は一体なんなんだろう。


「……資格なんて、いらないよ」


「一ノ瀬さん?」


「好きって伝える資格がないなんて、そんなのただの言い訳だよ」


そう言いながら私はなんて最低なんだろうと自分で自分を責めていた。


自分を否定したくなくて、だからといって相手を否定する私は本当に最低だと頭の中では分かっていた。