そして映画を観終わり、少し早い夜ご飯を食べてから再び電車に乗って私たちの最寄り駅まで戻った。


陽平くんが言っていた私が好きそうな映画は恋愛ものだった。


冒頭から一時間、観ている間は確かに胸が踊った。


だけど途中からは話が読めてきてちょっとつまらない部分もあった。


あぁいう話はありきたりなものが多いような気もする。


過去に自分が何を観たことがあるのかは全く覚えていないけれど。


エンドロールの最中、陽平くんの顔を見ると眠そうでなんだかホッとした。


もしも陽平くんが感動していたらどうしようかと思ってたから余計にそう感じた。


ご飯を食べてる時や電車に乗って帰ってる最中は専ら映画以外の話をしていた気がする。


お互いあまりあの映画には関心を覚えなかったみたいだった。


陽平くんが言ってた私が好きそうな映画。


それはきっと前の私が好きな映画だったのだと思う。


そのことについてあまり深くは考えず、今隣にいる陽平くんのことを考えることにした。


大切なのは私が好きそうだという理由で選んでくれた心。


結果がどうであれ、過程が大事なのだとこれからの人生の為に言い聞かせた。


「くるみ」


最寄り駅から歩いてしばらくのところにある私の「家」の前で陽平くんが名前を呼ぶ。


「今日はありがとな」


デートの後はお礼を言うものなんだと知って、同様に「こちらこそありがとう」と返事をした。


「まだ離れたくねぇな…」


「うん?」


ボソッと放たれた言葉に聞き返せば、なんでもないと言われた。