「お前が好きそうな映画」


「私が好きそうな映画?」


「そう。俺だったら一人で観ないような、くるみと一緒だから観る、そんな映画」


「えー、なんだろう」


「楽しみにしてろ」


「うん!」


「くるみ?」


「どうしたの?」


「俺と一緒でちゃんと楽しいか?」


「え?」


「いや、やっぱなんでもねぇ……」


「あのね、陽平くん」


「なんだ?」


「凄く楽しいよ。今は色んなことが新鮮で、陽平くんと一緒にそれを味わえてるのが私は物凄く嬉しい」


「そうか」


「陽平くんがね、私の為に色々してくれてるのちゃんと分かってるよ。いつもありがとう」


「照れるからもういい」


そう言って顔を隠そうとした陽平くんの顔を無理矢理覗き込んでみると、本当に照れていたのか真っ赤だった。


「陽平くん可愛い」


「うるせぇ、お前の方が可愛いんだよ」


「冗談でも嬉しいよ」


「冗談なんかじゃねぇ。俺はもう冗談や嘘なんか言わない」


「……なにか冗談や嘘を言ったことがあるの?」


「……」


私がそう問うた瞬間、陽平くんの表情が一変した。


なんていうのか、何かを悲しんでいるような、悔やんでいるのか、わからないけどそういう表情。


だから察した。


これはそれ以上私が踏み込んではいけない合図なんだと。


「私も嘘吐いたことあるよ、陽平くん」


「え?」