エスカレーターを何回か上り、たくさんの洋服屋さんを通り過ぎた奥にある映画館に辿り着いた。


紺色の絨毯がしいてあって、何故だか分からないけど映画館という感じが分かる。


誰と来たとかそういうんじゃなくて、なんとなく映画館がこういうものであったということがぼんやりと脳の記憶内にある気がした。


「チケット買ってくるから、待ってろ」


「うん」


どんな映画を観るのだろう。


特別どんな種類の映画が好きだというのはないし、自分がどのジャンルが好きなのかもまだ分からない。


リビングで流れてるドラマをなんとなく観ることはあるけれど、そんなに必死になって観ようと思えるものもない。


しばらくして陽平くんが戻ってきて、始まるまでまだ一時間近くあると言われ、時間潰しに洋服屋さんの隣にあった雑貨屋さんに入った。


特に何をするでもなく、時々小物について可愛いねと言ったりだとか、これ変わってるねだとか、そういうことを言い合ってた。


もうそろそろ出ようかということになって、今度は空いていた3人掛けのソファーに腰掛けた。


「見るだけでも楽しいね」


「そうだな」


「陽平くんの趣味はちょっと疑っちゃうけど……ふふっ」


「そんなに笑うことねぇだろ」


「いや、あれは誰だって笑うよー!」


「俺はあれが一番なんだけどな」


「えー、でも確かに思い返せばキモ可愛いかったかも」


「だろ?」


「多分ね……ふふっ」


本当に思い返しただけでも笑えるような代物を可愛いと言っていた陽平くんは変わってる。


面白いくらいに。


「そう言えば、映画は何を観るの?」