いつか淡い恋の先をキミと

……なんだか可愛いな。


初めて繋ぐ手。


握り返すとまた軽く握り返される。


そんなことの繰り返し。


こんなささやかなやりとりが電車を降りるまでの数分間、ずっと続いた。


降りてからは陽平くんに連れてこられるがままについていき、到着したのは大きなショッピングモールだった。


「……おっきいね!」


「あぁ。まだ出来て1年くらいしか経ってねぇから中も新しいはずだ」


「そうなんだ」


「映画でも観ようと思ってな」


「映画?」


「みんなとだとあんまり来ようって気にならねぇからさ。二人だけの特権だろ」


『特権』って言葉はなんだか私をふわふわさせてくれた。


二人だけの『特権』。


彼氏と彼女である『特権』。


「連れてきてくれてありがとう、陽平くん」


「……そんな礼なんていらねぇよ。俺がお前と来たかったんだから」


「うん。でも嬉しいから」


「……分かったからもう行くぞ」


まるで何かを隠すように私の手を掴んでズカズカと歩き出した陽平くんだけど、あとからちゃんと歩幅を合わせてくれる不器用な優しさを持ち合わせてることも知ってる。


きっとこの人は愛情表現が苦手なんだ。


直球でしか言葉に出来なくて、まどろっこしいことが嫌いで。


だけど私のことをちゃんと一番に考えてくれるそんな人。


陽平くんに握られてる手の温もりを感じながら、安心感を感じていた。