いつか淡い恋の先をキミと

――くるみがあんなにいい子じゃなかったらいいのにって。


――そしたらくるみのこと嫌いになれるのに、あたしは恋敵さえも嫌いになれないの。


――戦っても目に見えてる勝負をしたくないんじゃないの、陽ちゃんに気持ちを伝える覚悟はいつだって出来てるの。


――だけどやっぱりあたしはくるみのことが大好きなの。


――あたしが陽ちゃんに告白しちゃうとやっぱり色々話って回っちゃうじゃん?


――それでくるみのことが好きだから断られたってことをくるみに知られたくないんだよね、あたしは。


――こんなことでくるみとの関係を壊したくなくて、あんなにいい子を失いたくなくて。


――高校入ってさ、くるみが一番最初にあたしに友達になろうって言ってくれたのが物凄く嬉しくて、忘れらんないんだよね。


――だからあたしは二人の幸せだけを祈ることにするから、今言ったことは内緒にしててください。


泣きながら無理に笑う響子の顔は、俺が言うのもなんだけれどとても綺麗だった。


恋には色んな形があるのだと思わずにはいられなかった。


響子の好きな陽平がくるみを好きであるように。


陽平の好きなくるみがそれに気付いてないように。


こうして俺と悠実が今を一緒に過ごせているように。


それぞれが色んな想いを抱えて生きているのだと、思い知らされた1日だった。