いつか淡い恋の先をキミと

「悠実なに言ってんの。あの人のせいでくるみは記憶失くなっちゃったんだよ」


「そうだけど…くるみは絶対に榛名くんのことが好きだったよ」


「……それ言うのはずるいよ、」


「ごめんね、響子」


「あたしだってくるみが榛名くんのことどれだけ好きだったか分かってるよ。だけどそれじゃ報われないじゃん。陽ちゃんと一緒にいる方が幸せになれそうじゃん」


「……うん」


「くるみにも幸せになってほしい。だけど出来るなら陽ちゃんにも同じように幸せになってほしいの……」


今にも泣きそうな声を出す響子に声を掛けてやれるのはこの場では拓哉しかいなかった。


あれは二年に進級する時の春休みだったはず。


陽平と言い合いになって珍しく泣いていた響子に悠実がついていったから、俺も一緒になって三人で話している時だった。


陽ちゃんってくるみのことになるとムキになるよね、と諦めたような表情で言った響子に驚いた。


悠実の顔を見てみると、悠実は全部を分かっているかのような振る舞いで。


辛かったね、とただ一言を放った。


――最初は幼馴染だからかなって思ったの、だけどやっぱりそれだけじゃないなぁって薄々は感じてたんだよね。


――いつもやる気のない陽ちゃんがここぞという時ばかりにやる気を出すのはくるみが関わっている時だけ。


――くるみが陽ちゃんのことを全く相手にしてないのをみてホッとする反面、物凄く妬んじゃう時もあるの。


――なんであたしの大好きな陽ちゃんに好かれてるのに、って。