いつか淡い恋の先をキミと

「いいよ。何処に行くの?」


「それは秘密だ」


「みんなにも秘密なの?」


「ん?」


「翼くんとかにも何処に行くか秘密?」


「え、あー…あいつらは行かねぇよ」


「そうなの?」


「今回は二人だけ」


「そっか」


「嫌か?」


「嫌じゃないよ!陽平くんと二人でなんて初めてだから…ちょっとびっくりしちゃっただけ」


「そうか。ま、デートってやつだ」


「私たち付き合ってるんだもんね」


「……あぁ」


心なしか陽平くんの声が小ちゃかったのは気のせいかもしれない。


デート。


陽平くんと二人だけのデート。


デートってどんな感じなんだろう。


陽平くんと付き合っていたなら、絶対に何回かはしたことがあるはずなのに当たり前だけど思い出せない。


学校に着いてからもずっとデートのことを考えていた。


朝のホームルームの時も授業と授業の間の休み時間もトイレに行く時も、ずっと。


お昼休みに一緒に二人だけでご飯を食べているカップルに思わずデートってどんな感じか聞いてしまいたい衝動に駆られるくらい考えていた。


そんなに考え込んでいたからか、帰り道に拓哉くんの家に行くと言った陽平くんと別れて翼くんと二人だけになった時、「何を考えてるの?」と考えていることが前提で質問された。


やっぱり翼くんはいろんなことをしっかり見てる人だなと改めて思った。


「秘密だって」


「え?」


「デートで何処に行くのかは秘密なんだって陽平くんに言われたの」


「ちょっと待って、デートに行こって陽平に言われたんだね?」


「うん」