いつか淡い恋の先をキミと

そしてとうとう見えなくなってからは観念して、階段をのぼり、玄関扉を開けた。


「くるみ⁉︎」


「え?」


「帰りが遅いから心配したじゃない!」


「あ…ごめんなさい。担任の先生に呼ばれて、それで…」


「あら、そうだったの。そうならそうと携帯で連絡してくれれば安心するのに…くるみに何かあったんじゃないかと思って――」


「あっ!!」


「――なに、どうかしたの?」


「ううん、なんでもないです。今度から気を付けるから…今日は本当にごめんなさい」


「そんなにかしこまらなくてもいいのよ…」


「ごめんなさい、ちょっと汗掻いちゃったから着替えてくるね」


「お母さん」との会話を無理矢理に切り上げて、急いで階段を駆け上がった。


私はなんで榛名くんの連絡先を聞くのを忘れたんだろう。


それだけが今の私の頭の中を支配してる。


あの時、なんで交換しなかったんだろうと後悔だけが残る。


今から走れば榛名くんに追いつけるかな、そんな無茶な考えも浮かぶ。


学校で私と喋るのはよくないと言った榛名くんと次に会話が出来るのはいつなんだろう。


せっかく家にまで送ってくれて、尚且つこれからも連絡すれば来てくれると言った榛名くんなのに。


連絡出来ないんじゃ意味ない。


……最悪だ。


ベットに仰向けに寝転がって、ただ天井を眺めていた。


もう今は何もしたくない、何も出来ない。


「……榛名くん」


小声で君の名前を紡げば、そこには温かさが待っていた。