スタートLOVE



「お待たせ。ごめんちょっと引き止められてた」

「おはよーアリス!またおばさんとおじさん?」

「認めねぇよなあの人たちも。もう少し素直になってもいいのに」

「それが出来てたらこんなになってないって!アリス、大丈夫?」

郁奈の事情を知っている2人は、郁奈が何を言われているのかも知っているので、一緒にいる時はさりげなくフォローしたり、休みの日は毎回遊びか練習か何かしら理由を付けて郁奈を連れ出していた。

「で、最初はどこだ?」

「家電だね。冷蔵庫とテレビ、エアコン……は付いてるからいらないけど、炊飯器、掃除機はいるじゃん」

「じゃぁ、その売り場に行くか」

日向がデパートの地図を見ながら言うと、雪姫は郁奈を引っ張って家電製品の売り場に行った。

「……ねぇ、なんで私よりもハイテンションなわけ?別に、私もハイテンションじゃないけどさ」

郁奈よりもノリノリで家電を選んでいく雪姫は郁奈の意見そっちのけでぱっぱと決めていく。

「はい!終わったよ!合計でこれね!」

「……は?」

貰ってきたであろう請求書には、家電製品にプラスして生活用品もセットにしては破格の値段だった。

「これ、どうしたの?こんな安いはずないよね?」

「白雪……何を、したんだ?」

日向は白雪のコミュニケーション能力の高さを知っているので、余計何をしたのか気になっているようだ。

「?ちょっと交渉しただけだよ?」

そう言った雪姫の後に、やたらニコニコしている店員がいた。日向と郁奈はその店員の方を向くと、顔を引き攣らせた。

「え、ゆ、維野!?」

「おま、お前、どうして!」

「や、俺のじっちゃんがこのデパートの社長?って言うかまぁそんな感じの人で、『お世話になった先輩が一人暮らし始めるらしくて、少し値引きしていい?』って聞いたら、あれもこれもって色々追加してくれて」

「色々立場乱用じゃねぇの!?すげぇな!」

控えめに言った維野は、日向にツッコミを入れられて若干引いていた。

「でも、本当にいいの?」

「あ、はい!じっちゃんが、その他必要なものがあればこのデパート内なら全部半額にしていいって!なんで、俺も一緒に回っていいですか?」

これも控えめに聞いてきた維野に日向と郁奈は顔を見合わせて笑った。

「あははっ!維野、今はプライベートなんだよ?そんなにかしこまらなくてもいいよ」

「むしろ、俺達がかしこまるべきだろ?堂々としてろよ!」

維野はチラッと雪姫を見た。雪姫は知っていたかのようにニヤッと笑うと、維野の背中を押した。

「〜〜っはい!アリス先輩!亜輝先輩!」

「お、白雪のやつから聞いたの?いいじゃん!どんどん呼べよ!真琴!」

「私もいいよ。私も真琴でいい?」

日向と郁奈は嬉しそうに笑う維野の方を見て、雪姫に「グッジョブ!」と合図した。

「じゃぁ行こうか!またま買うものあるんだから!」

おぉー!

気合を入れ直し回るフロアを決めていく雪姫と日向は、楽しそうで郁奈は、家具は自分で選びたいと言う些細な希望が通るのか不安になった。



「今日はありがとうね。予想してた金額の半分で全部買えたよ。最後は荷物持ちにしちゃってごめんね」

夕方になり4人はデパートの入口付近で集まっていた。買い物は無事に終わり、荷物は引っ越すまで預かってもらうことになった。

「いえ、俺は先輩方にお世話になることが多かったので、何かお返しをしたかったんです」

趣旨が違っちゃったけど、出来て良かったです。

ふわっと笑う維野は、素直に嬉しかったと顔に書いてある。

「じゃぁ、素直な真琴にひとつ、いい事を教えてやろう!」

「主将っていうのは、ただ単に皆んなをまとめればいいってものじゃない。一人一人をしっかりと見てあげること、上手くいったら褒めてあげること、何かやらかしたら矢面に立って守ってあげること、その後はしっかり叱ること」

「仲間を切り捨てれば、自分が切り捨てられる。それをしっかりと覚えておきな」

じゃぁな!

バイバイ!

今度は勝負しようね!

日向、郁奈、雪姫の順で言うと、振り返らずに歩いていってしまった。

ー追いつきたいー

維野は、自分の中で唐突に現れた闘争心に驚きつつも、何をすればいいのか分かったので顔を上げ真っ直ぐと前を見据えた。

「……3年間、ありがとうございました」

届かなかった言葉は、次に繋いでいこう。
維野は店員に言われるままデパート内に戻っていった。