スタートLOVE


「本当に行くのか?」

今日は、雪姫と日向と一緒に買い物に行く予定だ。高校に上がるのを境に、郁奈は一人暮らしをすることとなっている。
だが、郁奈は絶賛足止めを食らっていた。理由は郁奈が一人暮らしをするからだ。

「くどいよ、父さん。言ったよね?高校からは学費を含めて全部自分で払うって。その為にはここにいたら意味が無いの。陸上で貰った賞金とかあるから当分はそれでなんとかなるし、バイトも決めてある」

郁奈の父は頑固で、郁奈が声優になることを反対していた。それは郁奈の母も同じで、亜輝はある条件を出して受験することにした。それは

『入試で満点、もしくは首席で入学すること』

だった。これには勿論実技も入っている。
郁奈は見事に筆記は満点、実技は満点ではなかったものの上位の成績。その上、総合では見事に首席を勝ち取った。それは雪姫や日向が一緒に見に行ったので、父も信じるしかなかったらしい。

「……一人暮らしと学費のことは条件にはなかったぞ」

「そうよ。何もこんな時から……」

「くどいよ二人とも。私は最初から決めてた。だから、首席の生徒が特待で入学金免除なのも知ってた。知った上での条件だよ」

友達と約束があるからもう行く。

それだけ言い残して、郁奈は家を出た。
両親との不仲は小学校6年の頃からだった。きっかけとしては、郁奈の趣味のことから始まった。

郁奈はその頃から陸上をやっており、趣味は走ることだった。両親も、特に咎めずにのびのびとしていた。しかし、中学1年の期末試験の時、郁奈は期末を受けなかった。正確に言えば、遅れて受けたのだ。その理由が陸上の大会だった。
その大会は、郁奈にとってとても大切な大会だった。学校の方も

「大会に出てくれ」

と言っていたので、郁奈は迷わずに大会に出た。両親は、郁奈が期末をサボるために大会に出たと思っているようで、当時の郁奈の担任に事の顛末を聞いた。それで誤解も解けたのだが、ことある事にこの事を持ち出してくる両親に、最初は耐えていた郁奈だが最後にはキレた。滅多にキレない郁奈が、我慢の限界だと言わんばかりにキレたので、両親は何も言い返せずに今のような冷戦状態が続いている。