スタートLOVE



「う、受かってるーーー!」

「うわぁぁぁ!奇跡だ!」

高校の志望校が同じ雪と日向は、一緒に合格発表に来ていた。勿論、そこには郁奈も居て2人が合格したことに驚いていた。

「……よく受かったね。願書締切ギリギリで志望校変更なんて無茶やっといて、本当に本番には強いよね」

2人は当初、推薦で行ける所を志望していた。が、郁奈の学校の近くに陸上の強豪校があると聞いて、急遽志望校を変更したのだ。だが、その高校は進学校で偏差値が高いためそのままの2人の偏差値では行けない。そのため、郁奈が試験日まで付きっきりで入試対策をしたのだ。

「まぁ、1週間でここまでって、凄いと思うよ」

「アリスの方は?」

「これからだから、2人の見たら行こうかなって」

「よし!アリスの見に行こう!」

テンションが著しく上がった2人は、郁奈の腕を引っ張ってバス停まで走っていった。


「う、受かってるーーー!」

「やったーーー!」

「うるさいっ!」

郁奈の合格発表に無理矢理ついて行った2人は、自分の合格発表以上にテンションが高く、喜んでいた。

「……良かった」

「うん。やっと、スタートラインかな」

「おっ、流石向上心の塊。でも、ここも別の意味で大変な試験だったのに、私達の勉強みながら受かるんて、凄い」

郁奈の受験番号は一番上の首席欄にあり、これには周りの人も驚いていた。
「……なぁ、あそこにいるのって、朔鵺じゃね?」

日向は、受付窓口の方にいる後ろ姿を指さして言った。
朔鵺とは、央咲朔鵺(オウサキ サクヤ)の事だ。央咲は陸上の男子短距離走で、唯一日向に勝つ人物で日向の幼馴染であると共に良きライバルだ。

「本当だ!おーい、央咲〜!」

手を振りながら央咲に駆け寄っていく雪姫は、めちゃくちゃいい笑顔だ。

「?あっ!雪姫さん!亜輝!それに郁奈さん」

「私はおまけか?」

「そ、そんなつもりじゃ!そ、それより、どうしてここに?」

郁奈の発言にあたふたと焦る央咲は、話題を無理やり変えて逃げの一手を打った。
「私がここを受けたの。だから、合格発表を見にね」

「えっ、もしかして、声優アニソン科?」

「うん。もしかして央咲も?だったら、これからよろしくお願いします」

それぞれ挨拶を交わすと、雪姫が頬を膨らませて郁奈の腕を引っ張った。突然の事で反応が遅れた郁奈は、亜輝に頭からダイブした。だが、雪姫はそんなことはお構い無しに央咲をキッと睨んだ。

「言っとくけど、央咲にアリスをあげるわけじゃないからね!あくまでも貸してあげるだけなんだから!卒業したらかえしてよね!」

「了解です。って言うか、2人は何処の高校行くんだ?」

央咲の質問に日向と雪姫はニヤッと笑って受け取ってきたばかりの合格証を見せつけた。

「ふふーん!俺達は都立・葦月高校に合格したんだ!」

「えっ……あの有名進学校!?マジ!?亜輝が!?」

「どういう意味だ!ふざけんな!」

ヘッドロックを決める日向は、央咲の「ギブギブ」を聞かずに引っ張ってった。

「……やっぱり子供だね、男子って」

「亜輝って、黙ってればイケメンなのにね」
「残念だよね……」

残された郁奈と雪姫は、合格証を貰い2人が行ったであろう方面に歩いていった。


ーーー卒業式ーーー
桜が少しずつ咲いてきている3月。
『南坂中学』卒業式。

「アリス!写真撮ろ!写真!」

「おい雪姫!服引っ張んな!」

校門までの道は、卒業生と在校生で賑わっている。その中でも一番賑わうものといえばどこの学校でもある『恒例のアレ』だ。

「先輩!第二ボタン下さい!」

「せんぱ〜い!私にください!」

「日向君!わたしにくれない?」

『第二ボタン争奪戦』

こればっかりはどうしようもない。日向はとにかく目立つ。そしてイケメンだ。本人無自覚なだけで、モテる。めっちゃモテる。

「ごめんなさい!渡したい人は決まってるんだ」

そう言うと、自分のクラスが固まっている所に走っていった。
クソッ!断り方もイケメンかよ!
どこかからそんな声も聞こえてくるが、イケメンなのは何も日向だけではなかった。

「有栖川先輩!スカーフください!」

「私にも!」

「私にも!」

女子の方には特にジンクスなどはないが、どこかからか『有栖川からもらったものを持つとどんな願いも叶う』と言う噂がたった。そのため、郁奈のほうにも人だかりが出来ていた。

「いやぁ〜モテる人は辛いですなぁ〜」

「なんで雪姫が威張ってんの?」

「モテねぇ僻みは良くないぞー」

「うるっさいなぁ!言っとくけど、いつまでもうだうだしてるヘタレにいわれたくないのよ!!」

「様子見ばっかで突っ込んでいかないお前に言われたくない!調子のんなや!」

「やっとの事で連絡先(個人の)を手に入れて浮かれてるお前が言うな!」

「何事も慎重に、とか言いながらちょっかいかけるしかないお前よりはマシだわ!」

「いい加減にしぃや!しりとりやりたかったらほかでやれ!」

鶴の一声ならぬ郁奈の一言に、ギャーギャー騒いでいた2人はすぐに黙った。郁奈を怒らせたらダメだということを知っている者からすれば 『あいつら終わったな』 くらいは思うかもしれない。

「それにしても、お前らが別々の学校に行くなんて、天変地異の前触れかなんかか?」

「だよなぁ〜お前ら、親友以上に仲良かったしな!」

同じクラスだった宮野は同じ陸上部で、短距離選手だ。
陸上部に所属していた3年は
郁奈『短距離』

雪姫『長距離』

日向『長距離』

宮野『短距離』
と言う具合に走る系ばっかりなのだ。ある意味バランスがいいとも言えるが、大会前などは必ずピリピリするため後輩からしたら迷惑極まりないと思う分かれ方だ。

「俺達だっていつまでも一緒は無理だよ。進む道が違う」

「ま、疎遠になるわけじゃないよ。って言うか、私はアリスから離れない!疎遠になっても、全力で探し出す!」

郁奈への本気度がカンストしている雪姫らしい発言に、郁奈に群がっていた後輩はドン引きしていた。
雪姫の発言に慣れきってしまったクラスメイトは「また始まった」と言って、郁奈と日向に雪姫をおしつけた。その身のこなしは完璧で相当慣れきっていた動きだった。

「あ〜楽しかった!」

「確かにな!」

クラスでの送別会が終わり、俺達は学校のグラウンドに来ていた。許可は取っているが長居はできない。

「俺達、これからバラバラになったりするんだな」

「何言ってんの?央咲を見てみなさいよ。学校は違うのにちゃんと幼馴染やってるじゃん」

俺は郁奈と雪姫を見て少し笑った。
同じ3年間を過ごしたはずの2人は、俺より大人な考えを出してくる癖に、たまに子供っぽくなる。だから、気づいてないんだよ。気づかないんだよ。

「お前ら、泣いてんぞ」

俺がしてやれんのは、いつものように無神経を装って笑っていることだけだ。

「何言ってんの?亜輝もだよ。泣いてる」

「もう、み、みんなで泣いてる」

俺も大概だったらしい。

ドッ!

「うわ、何!?」

「ありがとう!そんで、これからもよろしく!」

「亜輝が背中押してくれたんだよ!だから、進めるんだよ。ありがとう。亜輝に会えてよかった!これからもよろしく」

親友として!

……ざまぁ

……分かってた。分かってたさ。アリスが俺のことをなんとも思ってないなんて……
取り敢えず、 ざまぁって言った白雪は1週間は練習付き合ってやらねぇ。