部屋の鍵をしめた新藤さんは私たちを見下ろして、眉をひそめた。

そ、そうですよね。近すぎますよね。


離れようとすると、美崎さんの口が再び開いた。


「右腕と右胸が結構深く切りつけられてた。あいつは涼しい顔しかしないだろうけど、優しくしてやって」


至近距離に美崎さんと顔を合わせられず、正面を向いたまま頷いた。


「美崎、」

新藤さんが彼の名前を呼ぶと、美崎さんは素早く私から離れてタバコの火を消した。


「いいじゃん、食事に誘うくらい」

「仕事しろ」

鋭い目で言い放つと、新藤さんは美崎さんの足を軽く蹴った。


「君もこいつにはもっと警戒心をもたないと」

「信用ないなぁ。新藤がなっちゃん狙いなら、俺は引くけど?」

「いいから、さっさと運転しろよ」

明らかに不機嫌になった新藤さんを見て、美崎さんの前だと少し子供っぽくなるんだなぁと新鮮に思えた。