そうしてふたりが唇と唇を重ねてから、どれだけの時間が過ぎただろう。
しいなには無限とも思える時間だったが、実際にはほんの数秒のことだったのかもしれない。
コオがはるかの体を引きはがすように、向こうへ押しやった。
「よせよ、ベタベタするの」
ぶっきらぼうで、迷惑そうな口調だった。
(そうよ、はるか。ほら、コオ君が迷惑してるじゃない)
握ったこぶしに思わず力が入る。
だが、はるかは悪びれる様子もない。唇に不敵な笑みを浮かべ、背の高いコオの顔をのぞきこむように見上げる。
「うふふふっ、いいじゃない。あたしたちの仲でしょ?」
「誤解するなよ。この間のは、あれはちょっとした気の迷いだから。おれ、付き合ってる子がいるから」
「しいなのこと?」
「……ああ、そうだ」
「別れなさいよ、あんなの」
あんなの呼ばわりされて、しいなはムッとした。
だが、それよりも気になったのは、「この間のこと」という言いかただった。ふたりがキスしたのは初めてではないらしい。そのことがしいなの胸にゾワリとした波を立てる。


