私の最後の夏の思い出

 鹿を見つめたままの私の手を、瑞樹くんがぎゅっと握った。ゆっくり後ろに下がって、と低い声で囁かれる。瑞樹くんの手を頼りにそーっと後ろに下がって行くと、無事鹿を驚かせることなく先へ進むことができた。

「ありがとう、瑞樹くん。すごいね。」
 しばらく歩いてからそう呟くと、瑞樹くんはそんなことないよ、と少し照れ臭そうに笑った。また無言が続く。流石にこれ以上の無言は耐えられない、と思っていると瑞樹くんは立ち止まってここだよ、と言った。瑞樹くんの背中の後ろから顔を出してみると、そこには小さな池があった。