私が悪い。
送り状に「くも」まで書いた業者さんだって悪くないし、書かれていたものを読んだ晴太だって悪くない。
時期的に「ああ、雲の型のチョコレート作るつもりなんだな」って察して黙っていてくれたとしても、うれしくない。
つまりはどうしようもないことだった。
だから行き場のない悲しみを怒りに変えて晴太に当たってしまったことは、全面的に私が悪いのだ。
そう思うのに、晴太から何度電話が来ても、「今日行ってもいい?」ってメッセージが届いても、引きずった悲しみと罪悪感から無視をきめこんだ。
自分が悪いとわかっているからこそ、簡単に謝れなかった。

丸二日無視していたら晴太からも連絡は来なくなった。
何度も何度も携帯を確認するけれど、届くのは広告メールだけ。
そうしているうちに13日になり、悲しい気持ちで作ったガトーショコラは見事に失敗したのだった。

味はおいしい。普通に。
私は苦めのチョコレートが好きだから、人によっては「苦いよ……」って思うかもしれないけど、よくできた。
失敗したのは、こともあろうか形だった。
クッキーを作ったならきれいな雲の形になったかもしれないけれど、ガトーショコラは膨らむものだ。
型からはみ出たガトーショコラは、雲の形をしていなかった。
しかもケーキ用ではないからはずしにくく、どうにか型をはずしたところで、ぼこぼことした汚い楕円。
それは粉砂糖をふったところで変わらない。
無理矢理青空色の箱に入れてみても、それは歪んだ楕円以外のものには見えなかった。