鬼は~外、福は~内、の掛け声も近所迷惑を考慮してごく控えめに、私たちは落花生を撒きながら、広くもない部屋を一巡した。
そしてすぐさま回収。
一応年の数の落花生と、平均寿命を軽く越える数の煎り大豆を晴太はもりもり食べていた。
さすがに喉に詰まりそうだったようで、冷蔵庫からウーロン茶を取り出す。
そしてそれをグラスに注ぎながら言った。

「そういえば、この前届いてた『クッキー型(くも)』って、どっちの『くも』? 空の方? 巣作る方?」

ポリポリと大豆を噛みつつ歌番組を観ていた私の目の前は、そのまま真っ白になっていた。
返事もせずテレビを観続ける私を見て、晴太は何か勘違いしたようで、邪魔をしないようにしずかに座った。
そんな晴太の邪気のない態度を見ていたら、ふつふつと怒りが湧いてきたのだ。

「……なんで知ってるの?」

「え? 何が?」

「なんでクッキー型のこと知ってるの?」

「ああ、簡易包装だったけど送り状に書いてあったから」

「だからって見ることないじゃない! プライバシーの侵害! 情報漏洩! 職権濫用! 痴漢! 変態! ばかーーーーっ!!」

握っていた煎り大豆を思い切り投げつけた。
晴太は持っていたウーロン茶を安全地帯に避難させてから、叩き続ける私の手を止めた。

「え? なんで? 見たのは悪かったけど、そんなにまずいものだった?」

「知らない! 帰って! もう帰ってよ!」

怒りにまかせて晴太を追い出したこのときでさえ、彼が悪いわけではないことはわかっていた。
だけど、喜ばせたいと積み上げた気持ちを無造作に潰されて、とにかく悲しかった。