夜8時半に電話はかかってきた。

『さすがに、あれは恥ずかしかった』

「ちゃんと届いたんだ! よかった!」

せっかくだから小川さんに年賀状を出した。
よく考えたら住所を知らなかったから、一か八か『中央郵便局 小川晴太様』宛で。

『気づいた人が今日まで保管しててくれたみたい。そうでなければ出したその日に俺に届いたと思うよ』

「住所ってちゃんと書いてなくても届くものなの?」

『ある程度は。自分の担当地域ならほぼわかる』

珍しい名前なら、住所がなくても届けてもらえることもあるらしい。
大量に出される年賀状には、宛先に不備があるものも多く、郵便番号だけとか、マンションの部屋番号がないとか、よくあるのだそう。
それらはなるべく探して届けてくれるみたいだけど、どうしようもないものは返還処理される。

『名前だけなら探せることも多いけど、住所だけって困るんだよね。長年住んでる人のところなら届けるけど、アパートとか入れ替わりの激しいところだと、今住んでる人宛てなのか前に住んでた人宛てなのかわからないから』

マンションの部屋番号がない場合も同様で、珍しい名前なら届けてもらえる。
でもよくある名前なら一度返還することもあるとのことだ。
名前の特異性で差があるのは悲しいことだけど、機械的に処理するのではなく、頑張って届けようとしてくれるのだとうれしくもあった。