母の作ったお雑煮を一年ぶりに堪能しながら考える。
お餅だって年中売ってるし大好きなのに、なぜか普段は作らないなって。
逆に今、ペスカトーレなんて全然食べる気持ちにならない。
何も変わらない毎日を生きてるようで、こうして自然と季節を感じていたんだなー。

「餅3個って、おまえ女として終わってるな」

昼過ぎに起きてきた兄は、餅なんて重くて食えないと、カップラーメンをすすっている。
まあ、こういう情緒のないヤツもいるよね。

「市販のものより小さく作ってるんだからいいじゃない」

「正月太りまっしぐらだぞ? 俺なら嫌だな、年明けたら太ってるような女」

太った。
お腹周りがむちむちしている。
これは正月太りというよりも、小川さんのお土産のせいだと思う。
愛が、重い……。
人間は的外れなことを言われるより、図星を指摘された方が怒りは湧くものだ。

「そういう差別的で度量の狭いこと言ってるから結婚できないんだよ!」

「お前だって独り身だろ」

「……いるもん。彼氏」

だるそうにスープを飲んでいた兄が、プラカップを叩きつけるように置いた。

「はあ? お前みたいに色気の欠片もなく餅ばっかり食ってる女と付き合う男なんているのか!? 連れてこい! 証拠出せ!」

「仕事中だよ! 合コンばっかりしてるお兄ちゃんとは違うの!」

私と違って優秀で機械に強い兄は、SEという仕事に就いている。
見た目だって別に普通だし、不潔なわけでもないけれど、なかなか彼女ができない。
その理由は大いにわかるけれど、本人は気づかずに一生懸命婚活に励んでいて、大晦日の昨夜でさえ合コンだったらしい。
正直、大晦日に合コンしているような義姉は嫌だなと思う。

「あー、正月からこうして家族で雑煮食ってるなんて、年始早々人生が真っ暗だな」

どうやら合コンは不成功だったようでホッとする。

「年始は……来年もここにいるんだろうな」

年始と言わず、クリスマスだって誕生日だって、仕事が忙しいなら無理してくれなくていい。
だけど気持ちはうまくコントロールできない。

さみしい。会いたい。
早く終われ、お正月。